会社が勝手に解散されていた?!-休眠会社のみなし解散登記って?

休眠会社・休眠一般法人の整理作業

平成26年度以降、全国の法務局において休眠会社・休眠一般法人の整理作業が毎年行われるようになりました。 
休眠会社又は休眠一般法人について、法務大臣による公告及び登記所からの通知がされ、この公告から2か月以内に何らかの登記又は事業を廃止していない旨の届出をしない場合には、登記官の職権によってみなし解散の登記がされてしまいます。
 

休眠会社・休眠一般法人とは

(1) 休眠会社:最後の登記から12年を経過している株式会社(会社法第472条の休眠会社。特例有限会社は含まれません。)
(2) 休眠一般法人:最後の登記から5年を経過している一般社団法人又は一般財団法人(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第149条の
休眠一般社団法人又は第203条の休眠一般財団法人。公益社団法人又は公益財団法人を含みます。併せて「休眠一般法人」といいます。) 
 なお、12年以内又は5年以内に登記事項証明書や代表者の届出印の印鑑証明書の交付を受けていたかどうかは関係がありません。

法律上、株式会社の役員の任期は最長10年、一般法人の役員の任期は最長2年と定められています。
そのため、それぞれ10年又は2年に一度は役員変更登記の義務があります。
そこで、株式会社は12年、一般法人は5年経過しても何らの登記申請もされていない会社は休眠会社とみなす、
という基準を設けられたわけです。

 平成28年度においては、平成28年10月13日(木)の時点で(1)又は(2)に該当する会社等は、平成28年12月13日(火)までに登記(役員変更等の登記)の申請又は「まだ事業を廃止していない」旨の届出をしない限り、解散したものとみなされ、登記官に職権で解散の登記をされてしまいます。

 なお、「まだ事業を廃止していない」旨の届出をした場合であっても、必要な登記申請を行わない限り、翌年も「休眠会社・休眠一般法人の整理作業」の対象となりますので御注意ください。

 

法務大臣による公告と登記所からの通知について

  毎年1回(平成28年度は10月13日(木))、法務大臣による官報公告(休眠会社又は休眠一般法人は,2か月以内に「まだ事業を廃止していない」旨の届出がなく、登記もされないときは、解散したものとみなされる旨の公告)が行われます。
  また、対象となる休眠会社・休眠一般法人に対しては、管轄の登記所から、法務大臣による公告が行われた旨の通知が発送されます。
  なお、登記所からの通知が何らかの理由で届かない場合であっても、公告から2か月以内に
役員変更等の登記又は「まだ事業を廃止していない」旨の届出をしない場合には、みなし解散の登記をする手続が進められますので、注意が必要です。
 

「まだ事業を廃止していない」旨の届出について

 まだ事業を廃止していない休眠会社又は休眠一般法人は,公告から2ヶ月以内に役員変更等の登記をしない場合には、「まだ事業を廃止していない」旨の届出をする必要があります。 
 この届出は、登記所からの通知書を利用して、所定の事項を記載し、登記所に郵送又は持参します。
 通知書が届いていない又は見当たらない場合には、書面に次の事項を記載し、登記所に提出済みの法人実印を押印して提出します。この届出は代理人によって提出することもできます。
 
なお、「まだ事業を廃止していない」旨の届出をした場合であっても、必要な登記申請を行わない限り、翌年以降も「休眠会社・休眠一般法人の整理作業」の対象となりますので注意が必要です。
 

 【届出書に記載すべき事項】
(会社法施行規則第139条、
一般社団法人及び一般財団法人に 関する法律施行規則第57条又は第65条)

  (1) 商号,本店並びに代表者の氏名及び住所(休眠会社の場合)   
    名称,主たる事務所並びに代表者の氏名及び住所(休眠一般法人の場合) 
  (2) 代理人によって届出をするときは,その氏名及び住所  
  (3) まだ事業を廃止していない旨  
  (4) 届出の年月日     
  (5) 登記所の表示

 ※不備があると,適式な届出として認められないことがありますので,正確に記載してください。

【休眠会社・休眠一般法人の整理作業の流れ】

意外とあるみなし解散会社

12年も登記を放置する会社なんてそんなにないよ!と思われるかもしれません。

しかし、昨年の法務省の発表では、休眠会社とみなされた株式会社は約8万6000社、
そのうち期間内に届出や登記がなく、みなし解散登記がされた株式会社は約7万8000社あったそうです。
約9000社は経営実態があるにも関わらず登記を放置していたということですね。
lok_atamawokakaeru-thumb-autox1600-137891株式会社だけでもこれだけの数に上ります。

また、まこと事務所でもこの2年間で経営実態があるにも関わらず、みなし解散の登記をされてしまったという相談が2件ありました。
そのうち1社は、融資を受けるために銀行に登記事項証明書を提出し、その際に銀行から指摘されて初めて解散されていることに気づいたという経緯でした。

自社が気づかないうちに解散の登記がされてしまっていたら、銀行や取引先はその会社をどう思うでしょうか。
決して笑えない話だと思います。

 

会社継続の登記 

みなし解散の登記をされてしまった場合でも、解散登記後3年以内に限り、下記の決議により会社又は法人を継続させることができます。
  (1)  解散したものとみなされた株式会社は、株主総会の特別決議
  (2) 解散したものとみなされた一般社団法人又は一般財団法人は,社員総会の特別決議又は評議員会の特別決議

 継続の決議をした場合の登記の流れは以下のとおりです。
①清算人の就任登記
②継続の登記
(③会社の存続期間などの登記がある場合はこれを廃止する登記)
④取締役、代表取締役などの就任登記
⑤取締役会等の機関を設置する場合はその登記
 
③を除く①~⑤の登記をするだけでも、79,000円の登録免許税がかかってしまいます(資本金1億円以下の会社)。
また、かかる費用はこれだけではありません。
本来10年以内に行う義務のある役員変更登記を放置した制裁として、代表者に対し、過料(罰金のようなもの)が科されてしまいます。
この過料の額は最高100万円ですが、いくらかかるかは裁判所の判断となります。
 
また、解散登記後3年を経過してしまった場合は、残念ながらもう会社を継続させることはできなくなります。
あとは清算結了をするしかなくなってしまいます。
 
このように、登記義務を放置することによって思わぬ事態に陥ってしまいますので、たかが役員変更と思わず、
自社の役員の任期はしっかり管理することをおすすめいたします。