商業登記規則の改正
平成28年10月1日から、株主総会の決議が必要な商業登記申請の際に、株主リストの添付が必須となりました。
すべての決議につき必要な訳ではなく、あくまで登記に変更が生じる決議についてのみ添付が必要です。
ex. 管轄外の本店移転、目的変更、役員変更 など
この株主リストは、平成28年10月1日以前に決議をして効力が生じているものであっても、登記申請を平成28年10月1日以降にする場合は必要となります。
では、具体的にこの株主リストにはなにを記載していけばよいのでしょうか。
株主リストの記載事項
1 株主全員の同意が必要な場合
①すべての株主の氏名又は名称
②住所
③株式数(種類株式発行会社は、種類株式の種類及び数)
④議決権数
2 登記事項の変更について株主の決議が必要な場合
A 総議決権数の上位10名の株主
(当該議案につき議決権を行使できない株主を除くすべての株主)
B 議決権割合が2/3に達するまでの株主
(議決権数の多い方から加算する)
A、Bいずれか少ない方の株主について、次の事項を記載した株主リスト
①株主の氏名又は名称
②住所
③株式数(種類株式発行会社は、種類株式の種類及び数)
④議決権数
⑤議決権数割合
注)登記すべき事項につき、種類株主総会の決議を要する場合には、別途当該種類株主についての株主リストが必要です。
【株主リストのひな型】
上記のような書面に、代表取締役の印を押印し法務局へ提出します。
自社の株主がきっちり把握できていれば、そこまで負担にはならないのではとも考えられます。
しかし、自社の株主を把握していない、という会社は実は意外に多いのです。
株主が誰かわからない!
株主が把握できない原因としては以下のような場合があります。
例1
旧商法時代、発起人は最低7名必要でした。そこで、名前だけを借りて、実質は出資等を行なっておらず、会社の経営にも一切かかわっていない発起人がいる。会社の経営が親から子 へ移ったが、設立当初の発起人を把握できない。
例2
先代が引退して廃業するところ、いくらかを支払って会社を譲り受けた。その後何年も自分が経営を行なってきたが、株主については書面も何も取り交わしておらず、誰なのかわからない。
例3
株主が死亡しているので、誰が株主かわからくなっている。
通常、会社は毎年決算をしているはずですから、申告書の別表二を見れば株主が記載してあるはずです。そこを見ればわかるはずなのですが、実は申告書に記載されている方が実質の株主とは言い切れないのです。例1のように、設立当初に名前を借りた方を記載しており、現在もずっと修正することなくただ書き写しているだけ、という場合もあれば、例3のように相続が発生しているのに最新の内容を反映していない、という場合もよくあることなのです。
株主を把握する方法
では自社の株主はどうやって把握すればよいのでしょうか。
①原始定款を調べる
自社に保管をしていなくても、公証役場で保存していますので謄写をお願いしてみましょう。
※ただし、公証役場での定款保存期間は20年間です。
②設立登記申請書の閲覧をする
法務局に行って、設立時の登記申請書の添付書類を閲覧してみましょう。
※ただし、申請書の保存期間は5年と短いです。
以上のような調査を行ったうえで、株式譲渡証書などの書類をきちんと作成し、株主を確定させることが必要です。
例3のように実質会社を買い取ったような場合は、書面を残していないとしても株式の譲渡があったと考えられますから、先代から株式譲渡に関する書面を一筆貰っておけば安心です。
株主に相続が発生している場合の株主は誰を記載するか
次に、株主が死亡している場合、株主リストには誰を記載していくべきでしょうか。
①会社に対し死亡届が未提出の場合
「被相続人」
②相続人から会社に株主の死亡届が提出された場合
「被相続人の名前と法定相続人全員を併記」
③相続人から会社に相続人代表として議決権を行使する旨の届出があった場合
「議決権行使者」
④遺産分割協議が完了し、株式を相続したものから会社に名義書き換え請求があった場合
「相続した新株主」
上記以外にも、相続以外で共有となっている株式や基準日と議決権行使日で株主が違う場合などが想定されますが、基本的には実際に議決権を行使した株主を記載していくことになります。
いかがでしたでしょうか。
主に親族経営の会社を念頭に置いて記載してきましたが、そうでない会社でも、株主を把握できていない会社もあるかと思います。
例えば、社員に持ち株を分散させている場合や取引先同士で株を持ち合っている場合など、株主の入れ替えが頻繁で把握できていない会社も多いのではないでしょうか。
今のうちに自社の株主をきちんと把握する体制を整えておくことを強くお勧めいたします。